陳情書
令和3年2月3日

中野区議会議長殿

  件名 なかの生涯学習大学の再編について
陳情者代表 中野区 ■■ ■■■ ■■ ■■
    小 林 良 和   

主旨 令和2年12月20日付なかの区報 No.2058 の8頁に記載のなかの生涯学習大学(以下“生大”という)に関する「新入生募集を今年度(令和2年度)で終了し、 令和5年度にシニア対象の生涯学習事業 と地域での活躍応援事業に再編する検討を進め ます」について

  1. 先ずは “新入生募集終了”を撤回し、募集の継続を求めます。
  2. 再編が必要な理由、事業の姿、及び現行の生大制度からの移行計画についての 説明会の開催を求めます。
  3. この再編の検討に当たっては、意見交換会を 実施する等、生大の在校生や卒業生を含む区民の意見を幅広く聴く機会を設けてください。

理由 

  1. 今回の意思決定プロセスの不当性  本件について、直接の関係者 である現生大の在校生及び卒業生を含む区民に対して、区報記載以上の情報提 供や説明は一切なされていません。更に“ 新入生募集終了 ”という形での現行の 生大制度の改変を、区民の意見を聴取することなく、また、再編後の姿とそれへの 移行過程を明らかにしないまま、決定しています。この一連のプロセスは、区民を ないがしろにする極めて不当なものであるといわざるを得ません。
  2. 現行の生大制度の評価と再編の検証   現行の生大制度の価値の検証がなされていないだけでなく、事実確認を怠っています。 また、再編後の姿が、現行の生大制度より優れたものになるか否かの検証もなされて いません。
  3. 広い視野からの慎重な得失評価と検討の必要性  この再編の問題 は現生大の在校生及び卒業生のみならず、区及び区民全体の将来にとって、大きなイ ンパクトを与えるものです。生大での生涯学習を受けた区民の増加は、単に地域活 動への理解や貢献の増進にとどまらず、精神的・身体的に健康なシニアの増加につ ながり、高齢者の閉じこもり・孤独死問題、あるいは増大する医療費等の社会問題 の解決への一歩ともなります。この問題の扱いには、広い視野からの慎重な得失評 価を伴う検討が必要です。
  4. 受講生の地域活動  生大は、約50年の歴史をもち、卒業生は8,2 41名、数多くの地域活動の担い手を輩出しています。過去3年間の卒業生のアン ケート結果を見ても、85%以上の者が、地域活動に関心を示し、参加意欲を高め ており、卒業後も70%前後の者が町会・自治会、地域ことぶき会、地域祭りやバ ザー、地域で行う趣味の活動、福祉・教育・環境、まちなかサロン等の居場所づく り、世代間交流・学校支援等に参加し、一人が平均して3種類の地域活動に従事し ています。
  5. 生大の学習と地域活動の結びつき  生大の講義や実践の中で、地 域活動のノウハウ、自分の余生の送り方や活かし方を学び、地域活動への動機付け が高まり、自身が活動できそうな目標も定めることができるようになります。地域 活動は、団体や個人が行っているものが多数ありますが、自分が何をしたいか、何 ができるかが明確になると、良いマッチングが可能になります。生大の学びは、地 域活動に自発的に踏み出すための大切な助走の援助を与えています。地域の担い手 の質の向上のためにも、地域活動へと誘う生大の講座と実践の結びつきは不可分で す。
  6. 長い期間をかけて時間と場を共有することの重要性  さらに大 事なことは、生大で学ぶことにより、今までの人生で帰属していた学校や勤務先 等の枠を外れて新たな人との交流が地域で生まれ、深まるということです。この “新たな仲間が地域に出来るか否か”が、実際に地域活動等に踏み出すかどうか を左右する大きな決定要因になります。気の置けない友人は一朝一夕にはできま せん。生大は、3年間という長い期間をかけ、共通の目的に向かっての経験と時 間を共有する機会を提供することで、その様な仲間を作り出すことに成功してい ます。
  7. ICTによる新たなつながり  今年度の臨時企画プログラムは オンラインを併用したハイブリッドの形態で実施されました。ICTをうまく使 い、オンライン受講ができる生大生を増やすことを当面の目的に、生大生有志が 集まり“チームICT”というグループを立上げて、ICT初心者相談会をすで に10回も開催しました。同グループは、更に生大生同士がオンラインでのつな がりをつくる為のオンラインサロン開催にも、活動を広げています。これも生大 という土壌で仲間ができたからこそ実現されたものです。ICTを使いこなせ、 かつそのレベルの高い住民が増えることは、生大の枠を超え、やがて区や地域に 極めて大きな貢献をすることになっていくものと期待されます。 
  8. 生大が評価されている事業紹介の主な例  多くの学会・団体等 から、取材や活動の紹介依頼があります。主なものを挙げると、 (ア)学 習成果を地域の活性化につなげている事例として紹介。(文部科学省「超高 齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」の平成23年度の報告「長 寿社会における生涯学習の在り方について」巻末資料1/7から ) ( イ)「優良市民大学第1期25団体」の一つに選定。(全国市民大学連合 会による。令和2年度) (ウ) コロナ禍の“新しい日常”の下でシニ アの社会参加を助ける優れた活動例として紹介。(内閣府主催、文部科学省・厚生 労働省後援の「高齢社会フォーラム in 東京」令和3年1月18日開催)
中野区議会議長殿 宛 陳情書(令和3年2月3日 付け)
件名 なかの生涯学習大学の再編について
陳情理由に記述されている資料及び記述内容に関する資料
資料1:理由8)ア
文部科学省「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」平成23年度報告「長寿社会における生涯学習の在り方について」巻末資料1/7
資料2:理由8)イ
全国市民大学連合(一般社団法人学び・まちづくり推進機構)選定 「優良市民大学第1期25 団体」について
資料3:理由8)ウ
内閣府主催、文部科学省・厚生労働省後援「高齢社会フォーラムin 東京」令和3 年1 月18 日開催)案内チラシ (藤原佳典氏の基調講演でなかの生涯学習大学チームICTが紹介された)
資料4:理由4)
なかの生涯学習大学受講者アンケート結果より
資料5:理由4) 理由8)
なかの生涯学習大学の現在とこれまで
なかの生涯学習大学受講者アンケート結果よリ
●対象:卒業1年後の受講生全員、 卒業生の交流会1の参加者

1. 回答者数(回答率)

  平成29年 平成30年 令和元年度 交流会は未実施
  50代 1   50代 0   50代 2  
  60代 44 128 60代 39 148 60代 26 77
人数 70代 67   70代 89   70代 45  
  80代 15 (76.6%) 80代 16 (79.1%) 80代 4 (78.6%)
  不明 1   不明 4   不明 0  

2.受講成果…入学後に「変わった」と感じたトップ5   ※重複回答あり

  平成29年 平成30年 令和元年度
1.地域の友人や知人が増えた 97  (76%)  122  (82%)  66  (86%) 
2.区や地域に関心をもつようになった 74  (58%)  83  (56%)  53  (69%) 
3.地域活動 に参加するようになった 51  (40%)  74  (50%)  43  (56%) 
4.外出の機会が増えた 46  (36%)  44  (30%)  40  (52%) 
5.健康への意識・関心が高まった 27  (21%)  36  (24%)  37  (48%) 

3.地域活動への関心、参加意欲

  平成29年 平成30年 令和元年度
高まった 111  (87%)  126  (85%)  67   (87%) 
変わらない 17  (13%)  14  (10%)  9   (12%) 
未回答 0  (0%)  8  (5%)  1   (1%) 

4.卒業後の地域活動                 ※重複回答あり

  平成29年 平成30年 令和元年度
1. 地域ことぷき会 57  (45%)  71  (48%)  44  (57%) 
2. 地域で行う趣味の活動 47  (37%)  59  (40%)  36  (47%) 
3. 地域まつりやバザー 34  (27%)  44  (30%)  29  (38%) 
4. 地域の町会・自治会等 19  (15%)  40  (27%)  25  (33%) 
5. 福祉・教育・環境 13  (10%)  43  (29%)  25  (33%) 
6. まちなかサロン等の居場所づくり 22  (17%)  49  (33%)  21  (27%) 
7. 避難訓練などの地域防災 9  (7%)  28  (19%)  16  (21%) 
8. 健康づくり・介護予防 18  (14%)  32  (22%)  16  (21%) 
9. 世代間交流・学校支援 20  (16%)  19  (13%)  15  (20%) 
10. 清掃活動などの地域美化 16  (13%)  21  (14%)  14  (18%) 
11. 地域の歴史 18  (14%)  26  (18%)  12  (16%) 
12. 防犯啓発などの地域治安 6  (5%)  20  (14%)  11  (14%) 
13. 多文化共生・国際交流 5  (4%)  11  (7%)  5  (7%) 
14. その他 6  (5%)  9  (6%)  4  (5%) 
15. 特に活動していない 8  (6%)  1  (1%)  11  (14%) 
16. 未記入 28  (22%)  17  (12%)  12  (16%) 

5.活動していない理由 健康上の理由、仕事・家庭上の理由(介護、孫の世話など)
6.具体的な活動例

まちづくり計画、平和の森公園の整備計画に参加
民生委員、民生児童委員に就任
統計調査員に就任
地域活動担い手養成講座受講
大和区民活動センター発行の「みんなの大和ニュース」編集
町会、自治会、消防団に参加
友愛クラブ、「夢ひろば」サロンに参加
中野検定受験
地域のことぷき会で「野外見学会」幹事
近隣の公園、公共の場の花壇等の掃除、植物育成、花の手入れ
桃園緑道の整備、清掃の手伝い
中野防災リーダー養成講座受講、防災士資格取得
図書館ボランティア
ボランティア活動(社会貢献、農業関係、介護予防支援)
ほほえみサービス登録
傾聴資格取得
手芸(編物、キルト、ビーズ等)で作品を作り、バザーを開き、売上金を寄付
水辺ラインのガイドボランティア
特別養護老人ホームの洗濯物整理
独居老人支援
認知症サポートメイト
シルバー人材センタ(週に数回労働。まだ仕事ができると知り、働く喜びを感じている)
東京商工会中野支部事務局長を紹介してもらい、地元の企業内研修企画
常勤で働き始めた
サロンを立ち上げた
手話講習受講
10代・20代で心の病を持っている人との関わり
地域で子育て中のお母さん達の支援
子ども食堂
小学生のための学習補助、読み聞かせ、昔遊び
外国人に部屋を賃貸。外国人の移入状況や今後について学ぶ
ダイバーシティ
外国人への日本語指導
オリンピック語学ボランティア
大学の公開講座受講
なかの生涯学習大学の現在とこれまで
なかの生涯学習大学概要

 なかの生涯学習大学は、3年間の進級制の講座であり、受講生である区民 が自身の豊かな経験を活かして、仲間づくり地域・社会活動をスタートでき るよう、現代社会の課題地域の現状などを学習する事業である。

また、円滑に地域で活動を行っていくために、講義の他、区関係機関や大学 等と連携を図るとともに、地域活動に関連した情報を積極的に提供している。

受講生は、居住の地域ごとで構成された「班」(区民活動センターエリア基 準)を単位として、各カリキュラムへ参加するとともに講座の運営面にも参画す る。

対象 入学時、満55歳以上83歳未満 。区内在住者。
定員 200名(1学年)
会場 主になかのZERO西館
学習期間 5月から12月まで(年22回)

 

目的

  

 
• 自己啓発をとおして、生きがいをもち、地域の中で新しいライフスタイルを創造する。
 自らの豊かな経験を活かして、ともに学び合いながら、地域のために活動する意欲を培う。
 地域で活躍できるよう、必要な知識・技術を高め、地域社会への主体的参加の促 進を図る。
 

 

第1学年
ねらい
現代社会の課題や現状を学び、仲間とともに地域の課題を考え合い、 中野区について理解を深める。
概要
多彩なテーマによる講義をとおして、中野区の歴史や現代社会の状況 などを学ぶ。班員の交流を目的としたプログラム(「青空教室」)も実施 し、同じ地域の受講生で仲間づくりをすすめる。
高齢者を取り巻く課題をテーマとした講義(福祉、健康、環境、社会参加)
中野区への理解を深める講義(文化、歴史、まちづくり)
仲間づくりのきっかけとなる講座(オリエンテーション、青空教室 など)
第2学年
ねらい
後期ゼミナール学習をとおして、自分に合った地域課題を理解し、実践活 動に向けた基礎知識やスキルを学ぶ。
概要
前期は講義、後期はテーマ別にゼミ学習(全5回+発表)を行う。ゼミ学習 は、受講生が関心のあるテーマについて理解を深めるとともに、班員以外の 仲間づくりのきっかけとなる。
第1学年から引き続きテーマによる講義(福祉、健康、社会参加、等)
地域の実践活動につながるテーマ別ゼミ学習 (平成31年度:介護予防実践ゼミ、歴史・文化ゼミ、 多文化共生ゼミ、世代間交流ゼミ)
第3学年
ねらい
より実践的な学習やグループワークをとおして、卒業後の地域・社会活動 に必要となる知識や技術をさらに高める。
概要
学んだ成果をどのように地域に活かしていくか、グループワーク、フィール ドワークを中心とした全6回の連続講座により実践にむけた行動計画を企画 する。また、第2学年から続くゼミ学習は、区関係機関や大学との連携し、よ り実践的な内容を学習する。
区内及び近隣大学との連携を含めたテーマ別のゼミ学習
地域の課題調査し、解決するまでを行動計画にまとめ発表する連続講座 (学んだ成果を 地域に活かそう)
卒業後の活動
地域ことぶき会 への参加

街の美化運動、公園花壇管理、身障者救援、防犯パトロール、 都内や近郊への散策、 小学校における学習支援(図書貸し出し、読み聞かせ、昔遊び等)、祭りなどの地域行 事への参加等、各団体で幅広く活動している。
区内の各団体への参加(ボランティア参加等)

• 町会・自治会・消防団  • 社会福祉協議会  • シルバー人材センター
• 国際交流協会  • 民生委員・児童委員 • 統計調査具  • 友愛クラブ
その他に、国際交流、歴史・文化、世代間交流、福祉ボランティア、学校支援、 防災・安全、環境・自然、地域の見守り、健康づくり、サークル活動 な どの分野。
事業の歴史
ことぶき大学・大学院 卒業生数 7,134名
なかの生涯学習大学 卒業生数(平成31年度) 1,107名
事業全体 卒業生数 8,241名

昭和48年 ことぶき大学始まる。 (対象) 入学時、満60歳以上80歳未満。区内在住者。 (定員)150名。(会場) 中野文化センター(現なかのZERO)。 (学習期間) 5月から12月、年間12回。
昭和56年 ことぶき大学院(対象:ことぶき大学卒業生)始まる。年間18回。
昭和49年 A、Bコースの2年制に。 運営委員会を発足。 クラブ活動開始。
昭和50年 A、B、Cコースの3年制に。 年間14回に増加。
平成4年 地域ことぶき会が、各地域センターの地域活動推進員の支援で全地域 に発足(平成4年から9年)。
平成20年 団塊の世代が地域に戻ることを機に、 在校生にアンケートや説明会を行い、ことぶき大学大学院の事業を受講生と共に検討。
平成21年 カリキュラムを再構築し、なかの生涯学習大学に名称を変更。
平成22年 ことぶき大学院終了。
平成24年 文部科学省「超高齢社会における生涯学習の在り方に関す る検討会」の報告書において、学習成果を地域の活性化につなげている事例の一つと された。
平成29年 招聘事業紹介(東京大学・文部科学省委託事業「長寿社会における生涯 学習政策フォーラム2017」、東京学芸大学)。
平成30年 招聘事業紹介(東京学芸大学)。事業視察(町田市生涯学習センター、広島県三原市、台 湾・高雄医科大学)。卒論取材(津田塾大学)。
平成31年 招聘事業紹介(東京学芸大学)。事業視察(台湾・高雄医科大学)。
令和元年 全国市民大学連合会により優良市民大学第1期25団体の一つとして選 定された。招聘事業紹介(東京学芸大学)。 事業視察(長野県上田市教育委員会、杉並区教育委員会・すぎなみ協働 プラザ、月刊「社会教育」編集長、荒川区役所地域文化スポーツ部生涯学習課)。 卒論取材(早稲田大学)。
令和2年 新型コロナウイルス感染拡大防止の為に休学。3学年共同の 臨時企画プログラム「新たな“距離”と守るべき“つながり”」を開催。 「 つなげるサポーター・ チームICT」発足。 「初心者のための相談会」10回開催。 招聘事業紹介(東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課)。 事業紹介(日本サルコペニア・フレイル学会・公開講座、横浜市健康福祉局高齢健康福祉部)。 事業視察(長崎県対馬市)。取材(NHK・「シニア世代のICT」を取り上げた特別番組、 宝塚市・大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所、 港区・チャレンジコミュニティ・クラブ)。卒論取材(東京学芸大学)。
令和3年 事業紹介(内閣府主催・文部科学省・厚生労働省後援「高齢社会フォー ラム in 東京」、江戸川区議会)。招聘事業紹介(シニア社会学会・6月予定)。

1例年3月に実施 する[情報交換会]

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